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ジャン=フィリップ・コラール

貴方はショパン、ラフマニノフ、フォーレを得意とするピアニストして知られています。い

つ頃からシューマンに取り組むようになったのですか?

パリ音楽院で――フランス音楽はほとんど演奏されていませんでした――ベートーヴェン、

ショパン、リストのほか、シューマンもよく弾いていました。実はシューマンのピアノ音楽は、

常に私の心を捉えていたのです。ただし、当時大流行した《交響的練習曲》や、コンサート

でしばしば取り上げられる《謝肉祭》といった作品が中心でした。《クライスレリアーナ》を弾

くようになったのは比較的早かったのですが、あまり頻繁には演奏しませんでした。一方、

演奏家として《幻想曲》に関わることには躊躇していました。おそらく私は《幻想曲》を、自分

の身体の中で十分に理解できていなかったのでしょう。シューマンを高く評価していたピエ

ール・サンカン先生のもとでは、《子どもの情景》や《交響的練習曲》を学びました。先生と

私の関心の的は、どちらかというと身体的な事柄――例えばシューマンが、指のさらなる独

立を目指した結果、右手の薬指を痛めてしまったこと――でした。私たちの考察は心理的

な側面ではなく、タッチの質、シューマンのピアノ音楽の交響楽的な性格、オーケストラに

移し替えることが極めて難しい特異な密度の高さ、などに向かいました。