Background Image
Previous Page  46 / 56 Next Page
Information
Show Menu
Previous Page 46 / 56 Next Page
Page Background

46

ドビュッシー 前奏曲集

ています。しかし『西風の見たもの』など、深いヴィルテュオーソ的要素も見て取

れます。第二集でドビュッシーは、『映像』第二集で取り組んだ、音色、音響、音

域などにおけるピアノの可能性をさらに広げます。ヴィルテュオーソ性はそれだ

けではすでに意味を持たなくなり、これが使用されるのは常に詩的表現におい

てのみとなるのです。

ドビュッシーの楽譜には多くの指示がありますが、これをどう考えられま

すか。

P.B.

 どの指示もとても重要で、誠実に守ろうと努力しています。最も些細な指

示も大切にしています。小さな指示は、単にそこに書かれているだけでなく、音

楽を理解する上でのガイドとして、一つの曲の中にあるそれぞれの楽節をより良

く演奏するための方法と考えるからです。

poco crescendo

と書かれていれば誰

もが「すこしクレシェンドする」という意味だと理解しますが、その弾き方は皆違い

ます。私がドビュッシーの指示を尊重するのは、それを守って満足するというもの

ではなく、ドビュッシーという作曲家が表現するものをいかに詩的に理解するかと

いう点で、音符と同じくらい大切だと思うからなのです。

メトロノーム表示はどうでしょう。

P.B.

 いくつかの『前奏曲』にはメトロノーム表示があります。その大部分は自明

ですが、『音とかおりは夕暮れの大気に漂う』は四分音符

84

と表示されていて、

これはとても早い速度になります。個人的には、この速度での演奏をいまだかつ

て聴いたことがありません。この曲をとても遅いテンポで弾く人もいます。私として