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ドビュッシー 前奏曲集
今振り返って考えると、当時は
1970
年代のはじめで、ドビュッシーが『花火』を書
いてまだ
60
年くらいしか経っていなかったわけです。今の子供が
1950
年代に
書かれた音楽に対してこれだけの幸せとトランス状態を覚えるかどうか…… どう
でしょう ? わからないけれども、そういうことは考えたりしますね。
その後どのようにしてドビュッシーがあなたのレパートリーに入りましたか。
P.B.
まず『版画』を、それから『映像』や『練習曲』から数曲を勉強しましたが、こ
の時点ではまだまとまったものではありませんでした。
19
歳のとき、フィリップ・ア
ントルモン氏から、ドビュッシーのピアノ曲の全曲演奏に加わる機会を得ました。
氏とミシェル・ベロフ氏、まだ駆け出しの無名の私の三人で全曲を弾くのです。
主要曲の大部分は二氏が弾きましたが、私はこのとき初めて、本格的なドビュッ
シーのリサイタルプログラムに取り組みました。これは私がドビュッシーにかかわ
る上で大事なステップとなりました。
ガビー・カザドシュ女史に学ばれましたが、ドビュッシーについてはいか
がでしたか。
P.B.
彼女にはラヴェルの思い出のほうが多く残っています。夫のロベールとと
もにラヴェルの友人だった彼女は、ラヴェルと直接分かち合った体験を私に語っ
てくれました。先ほど出た最初のドビュッシー・プログラムは、彼女と一緒に準備
したのですが、技術面でも、音楽の色彩や微細表現へのアプローチについても、
多くのを学びました。
この時代以降、あなたの人生でドビュッシーの占める位置は。