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37

ターリヒ弦楽四重奏団

弦楽四重奏曲第

1

3番の最終版の最終章である「アレグロ」は、ベートーヴェンが最

後に作曲した楽曲である。この楽章では、それまでの不均一さを、より秩序のある

音楽スペースに位置づけている。この楽章に至るまでに聞かれた激しいコントラス

トやためらうような問いは、熱気を帯びた、しかし少々外的なエネルギーのほとば

しりに取って代わった。しかしこれは、曖昧さを解決するというより、その曖昧さ

を長引かせるものとなった。この楽章は遠いハイドン賛である。ベートーヴェンの

作品の中でも徹底して実験的なこの弦楽四重奏曲に、より明白に型にはまった解決

策を提供しているのがこの「アレグロ」なのである。

『大フーガ』の冒険は、興奮に満ちた緊張と分解された音楽的現実によって、多く

の人々の耳に最高の結論として響いているようだ。『アレグロ』にみられるより小

さな意義や、もろいようにさえ感じられる静かな様相はしかし、そこに至る

5

つの

楽章に、全く異なった意味を持たせることとなった。ベートーヴェンのこの最終的

な「視点」を完全におろそかにするのはどうだろう。たとえ作曲をめぐるエピソー

ド的・歴史的な状況が、この曲に少々疑いを持たせるようなものであったとして

も。