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ターリヒ弦楽四重奏団

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形式スペースは、ここでは逆に、ウィーン古典主義から受け継いだ(緩急楽章の間

における)あらゆる構造的ヒエラルキーを壊す試みとして現れる。対立する

2

つの

形式(舞踏楽章、対位法楽章)の間にみられるそれぞれの推移部がもつ極限までの

牽引力は、ベートーヴェンの最後の「マチエール」のなかで新しい様相をつくりあ

げている。最後のピアノソナタ群ではむしろ、(統辞的および形態的な)慣習をい

らだつほどに激化させることによって、その慣習に背いているようだ。弦楽四重奏

曲第

13

番(おそらく厳格な意味でベートーヴェンの作品中もっとも現代的な作品で

あろう)では、それらの慣習を切り離し、力と多様性を最大限に駆使して慣習を破

壊しているのである。

カヴァティーナは第

5

楽章におかれているが、なんとこれが作品の最初の本格的な

吸引極なのだ。つまり、ベートーヴェンが最初に描いたフィナーレ、すなわち、『大

フーガ』作品

133

にすべての重心が向かうように作られているのである。