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ゲーリー・ホフマン

 ダヴィッド・セリグ

41

1829

1

月作曲の『協奏的変奏曲』ニ長調 作品

17

は、チェロとピアノのための

最初の作品となるもので、創造性に満ちたメロディとともに、二つの楽器の間によく

バランスのとれた利発的な対話が見られる。友人で、作曲家・指揮者・チェリストだ

ったユリウス・リーツ(

1812-1877

)のために書かれた『アルバム・リーフ』(

1835

)を除

けば、メンデルスゾーンが再びチェロとピアノのために作曲するのは、

1838

年、『チ

ェロソナタ』第

1

番 作品

45

をもってのことである。前年、『弦楽四重奏曲』作品

44

の三曲の作曲にとりかかっていたこともあり、室内楽の創作には絶好の時期であっ

た。

『協奏的変奏曲』と同様、『チェロソナタ』第

1

番 変ロ長調は、弟で有能なアマチ

ュア・チェリストだったパウル・メンデルスゾーンのために作曲された。三楽章から成

るこの作品は、

1842

年から

43

年にかけて作曲された第

2

番イ長調 作品

58

の外

向的な性格と対をなしている。第

2

番は四楽章構成で、ロシアの庇護者マテウス

・ウィルホルスキ伯爵に献呈されている。初演は

1843

11

18

日、作曲

者のピアノとカール・ヴィットマンのチェロで、メンデルスゾーンが

1835

から音楽監督を務めていたゲヴァントハウスで行われた。

メンデルスゾーンの音楽では、オラトリオのような大曲から数々の『無言歌』に代

表されるピアノ小品に至るまで、様式美が存分に発揮されている。その無言歌であ

るが、室内楽分野では、

1845

年にチェロのためにイ長調 作品

109

が一曲のみ が

作曲されている。フランスのチェリスト、リザ・クリスティアーニ(

1827-1853

)のために

書かれたこの作品は、メンデルスゾーンの芸術に多く見られるように、豊かな叙情

性と慎ましさを備えている。