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24 JEAN SIBELIUS

今回のディスクには、オーケストラとの共演曲と、ピアノとの共演曲が収められています。

選曲の基準と、協奏曲を含めなかった理由をお話しください。

まず、ヴァイオリンとオーケストラのために書かれた作品を網羅しました。その例外が、ヴァ

イオリン協奏曲 作品

47

というわけです。協奏曲を除く“ヴァイオリンとオーケストラのための

作品”に光を当てたら面白いのではないか、と思いました。協奏曲に関しては、既に多数

の録音が存在していますから。言うまでもなく、ヴァイオリン協奏曲は私が格別に愛着を抱

いている作品ですし、コンサートでは頻繁に取り上げています。演奏するたびに新鮮な喜

びをおぼえますし、ソロ・パートから自立したオーケストレーションの具象的な側面には、常

々驚かされます。他の協奏曲との違いは、オーケストラが独奏パートに合の手を入れるだ

けでなく、ソリストと対等な一個の存在として自己主張をしている点でしょう。実は私にとって

は、ある小さなエピソードに心動かされる作品でもあります。妻が第一子を出産した時にち

ょうど私が演奏していたのが、この協奏曲だったのです!

その様なわけで、いつか必ずこの協奏曲を録音する日が来ると思います。ただし、いつ、ど

のように、誰と録音するのかを決めるには、まだ少し時間がかかりそうです。

ヴァイオリンとピアノのための作品を選曲した際には、「セレナード 作品

69

や「

2

つの小品

(荘重な旋律)作品

77

」のやや「暗澹とした」雰囲気とは異なる曲調が加わるよう配慮しまし

た。軽やかで天真爛漫な性格の作品、サロンを彷彿とさせるような作品を選んでいます。こ

れらはある意味、様式をめぐる小さな練習曲と形容することもできるでしょう。