Background Image
Previous Page  28-29 / 60 Next Page
Information
Show Menu
Previous Page 28-29 / 60 Next Page
Page Background

29

アドリアン・ラ・マルカ

まずは、イギリス音楽に絞って選曲なさった理由と、レコーディングを終えたばかりの今

の心境をお聞かせください。

レコーディング自体は過去にも何度か経験していますが、プロの演奏家としてディスクを

録音・発表するのは今回が初めてです。ラ・ドルチェ・ヴォルタがほぼ自由に選曲させて

くれたお陰で、実に個性的なアルバムに仕上がりました。

イギリス音楽には思い入れがあります。私が望んだのは、ダウランドから

20

世紀後半の音

楽までを取り上げ、イングランドが生んだス音楽の多様性を表現することでした。収録曲

には比較的軽めの作品も含まれていますが、全体の特徴を端的に表す言葉は、“情熱”

と“深み”でしょう。録音には多大なエネルギーを注ぎました。というのも私は、心理的に

本番のコンサートの状況に身を置いたのです。今回、幸いにも素晴らしいリエージュ・フ

ィルハーモニー・ホールでレコーディングを行うことができたのですが、録音の度に、ホー

ルが聴衆で埋め尽くされている様子を想像するようにしました。さらに私たちは、演奏の

一貫性、つまり音楽の流れの推進力を保つために、毎回かなり長めのスパンで録音を行

いました。ピアノ奏者トーマス・ホッペと共演できたことは、大きな幸運でした。彼は類い稀

な音楽家であり室内楽奏者です。私たちは約

2

年前に偶然、代役として初共演しました。

すぐさま、演奏のあらゆる点で相性が合ったことを覚えています。ホッペは豊富なインスピ

レーションを与えてくれる良き室内楽のパートナーであり、純朴さと素晴らしい思いやり、

そして深い音楽的教養を備えています。

さらに、レコーディングでピアノ調律を担当し、私たちのために尽力してくれたレジス・ア

レールと、芸術監督のジャン=マルク・レネの存在についても触れておきたいと思いま

す。レネの冷静さと熟練のお陰で、このアルバムのために最大限の力を発揮することが

できました。