

34
ヤナーチェク / シュルホフ
シュルホフより
1
年先だって、レオシュ・ヤナーチェクも最初の弦楽四重奏曲を作
曲している。
彼はシュルホフほど早熟ではなく、長い暗闇の時代をやっとの思いで抜け出たヤナ
ーチェクは、
1916
年、オペラ『イェヌーファ』のプラハでの大成功により、遂に公
に認められ、これまでになく多産な時期へと突入した。それは10年以上続き、『カ
ーチャ・カバノヴァ』、ふたつの弦楽四重奏曲、『利口な雌狐の物語』『グラゴ
ル・ミサ』『死者の家から』などが作曲された。やっと社会で認められたことと、
カミラ・シュテスロヴァへの情熱的な愛情が生まれたこと—これはヤナーチェクの
死によってしか消え去らない愛情だった—が、代表作につぐ代表作を生んだのだ。
『カーチャ・カバノヴァ』の初演から
2
年を経た頃、ボヘミア弦楽四重奏団が、ヤ
ナーチェクに弦楽四重奏曲の作曲を依頼した。彼は、
1880
年ごろ、ウィーンで音楽
を勉強していたとき以来、このジャンルにいまだ真っ向から取り組んではいなかっ
た。レフ・トルストイの有名な小説≪クロイツェル・ソナタ≫を読んだときの思い
出が、作曲への決定的な刺激となった。それより
15
年前に読んだこの小説が非常に
心に残り、すでに『ピアノ三重奏曲』を作曲しているが、この曲は現在は失われて
しまった。