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ヤナーチェク / シュルホフ

シュルホフより

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年先だって、レオシュ・ヤナーチェクも最初の弦楽四重奏曲を作

曲している。

彼はシュルホフほど早熟ではなく、長い暗闇の時代をやっとの思いで抜け出たヤナ

ーチェクは、

1916

年、オペラ『イェヌーファ』のプラハでの大成功により、遂に公

に認められ、これまでになく多産な時期へと突入した。それは10年以上続き、『カ

ーチャ・カバノヴァ』、ふたつの弦楽四重奏曲、『利口な雌狐の物語』『グラゴ

ル・ミサ』『死者の家から』などが作曲された。やっと社会で認められたことと、

カミラ・シュテスロヴァへの情熱的な愛情が生まれたこと—これはヤナーチェクの

死によってしか消え去らない愛情だった—が、代表作につぐ代表作を生んだのだ。

『カーチャ・カバノヴァ』の初演から

2

年を経た頃、ボヘミア弦楽四重奏団が、ヤ

ナーチェクに弦楽四重奏曲の作曲を依頼した。彼は、

1880

年ごろ、ウィーンで音楽

を勉強していたとき以来、このジャンルにいまだ真っ向から取り組んではいなかっ

た。レフ・トルストイの有名な小説≪クロイツェル・ソナタ≫を読んだときの思い

出が、作曲への決定的な刺激となった。それより

15

年前に読んだこの小説が非常に

心に残り、すでに『ピアノ三重奏曲』を作曲しているが、この曲は現在は失われて

しまった。