

ターリヒ弦楽四重奏団
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エルヴィン・シュルホフは、対立を超えて、当時あった様々な影響を統合した。作
品はザルツブルグ、プラハ、ウィーン、ジュネーヴで演奏され、現代性と伝統に培
われた、大胆さと独創性のきいたスタイルで、当時の作曲家の中でも傑出した人物
となったのである。『弦楽四重奏曲第1番』はそのことを強く物語っている。
曲は
1924
年にプラハで作曲され、
1925
年
9
月にウィーン音楽祭で初演された。古典
的なソナタ形式の短い曲であるが、緩徐楽章を最後に持ってくることでコントラス
トのあるデクレシェンドをつくりだしている。スラヴのメロディと当時流行のリズ
ムが、横溢としたはじめの
3
つの楽章、とくに「アレグロ・ジョコーセ・アラ・ス
ロヴァッカ」を占めているが、踊るようなリズムにあふれた熱烈さは、こっけいな
笑いを見せている。
最終楽章「アンダンテ・モルト・ソステヌート」はずっと暗く、苦悩に満ちた、考
え込むような、奇妙な輝きにつつまれたメロディーが延々と続いている。
生命力を解放させる力とメランコリーの淵を推し測るような力が同等にあいまった
中に、煮え立つような「師」ヤナーチェクの姿が見え隠れしている。