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ブラームス

1

楽章「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」は、ソナタ形式でかかれており、ウィ

ンナワルツを想起させる。

3

つのテーマが交互に展開されている。そのうち

2

つはド

イツ歌曲を、

3

つ目はダンスを連想させる。これらのアイデアを組み合わせること

はシューベルトの書法に見られるが、それは明快であると同時にノスタルジーに

あふれ、時にはユーモアがみられる。ウィーン的な要素はフィナーレにさらに顕著

で、遅めのテンポでワルツが踊るような音楽となっている。

「アンダンテ・マ・モデラート」は変奏曲からなっている。ブラームスは変奏曲形

式を非常に好み、この時すでにその書法をマスターしており、ピアノ曲やオーケス

トラ曲全体に生き生きと使用している。転調やディナーミクは、若いエネルギーに

導かれる室内オーケストラのようだ。ここには、弦楽四重奏に近いテクスチュアは

どこにも感じられない。たとえば最初のヴァリエーションではリズムを小分けに

して大きな広がりをもたせており、まるで管楽器に支えられているような感覚に陥

る。ブラームスはおそらく、ベートーヴェンが多くの民衆音楽の要素にエネルギー

を求めてリズムを使いこなしていたことを考えていたのではあるまいか。第

4

ヴァ

リエーションでは、より地味な雰囲気の書法となっており、最後の

2

つの総括的な

ヴァリエーションへのプレリュードとなっている。楽章は最後にピツィカートで終

わる。

スケルツォ(アレグロ・モルト)は力強く簡潔で、ダンスのステップの中にその緊

張を引き出しているが、それはベートーヴェンの第

5

交響曲にみられる毅然とした

ものをイメージさせなくもない。ベートーヴェンに対するこのオマージュには、幾

分のユーモアも含まれている。