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ダナ・チョカルリエ

シューマンと“Sehnsucht”

ドイツ語には、フランス語には翻訳しがたい言葉があります。その幾つかはシューマ

ンの音楽を見事に形容するものであり、一方で彼の音楽の神秘性をいっそう強めま

す。例えば“

Sehnsucht

”には、フランス語に限って言えば“ノスタルジア”あるいは“

憧れ”といった単純な訳語があてられています。しかし私は“

Sehnsuch

t”を、近づく

ことのできない別世界を切望する想いを指す言葉として理解しています。それは私

たちを自分の殻の外に出るよう促す衝動であると同時に、初めから到達不可能であ

ることが約束されているものを希求する態度なのです。“

Sehnsucht

”はノスタルジア

の要素も含みますが、その場合は、こうなりたいと望む自己に至れない状況下で私

たちが抱くノスタルジアです。つまり“オルター・エゴ(もうひとつの自己)”に対する憧

れです。

シューマンに関して言えば、彼の内にある

2

人の分身の拮抗が、最後には彼自身の

精神を両断してしまいました。彼の実存的不安は、オイゼビウスの穏やかな夢想とフ

ロレスタンの激情によって具現化されています。この

2

人の人物が、シューマンの音

楽と、彼の心持ち――ドイツ語の“

Humor

”に当たりますが、これもまた他言語には

翻訳不可能な言葉です――に絶えず影響を与えました。