42 ヴィルトゥオージ お二人の演奏の歌謡的な要素について、先程お話しいただきました。それはチェロ奏者パ ブロ·カザルスによる《鳥の歌》——平和讃歌にして自然讃頌——の編曲において、特に顕 著に現れています。カザルスは、このカタルーニャの伝統的な子守唄をアンコールで好ん で弾いていました。時がたち、この曲はスペイン難民たちの歌ともなりました。今回、チェロ の音色のパレットをどのように再現したのですか? ロマン·ルルー:音色をめぐっては熟慮に熟慮を重ねました。トランペットにかんしてはミュー トの使用を検討しました。私たち二人のアレンジによる演奏でしたので、レコーディングぎり ぎりまで沢山の様々なアイデアを試しました! 概して、方向性はかなりシンプルでした。私 たちの望みは、チェロの息遣いを再現することだったからです。最終的にはチェロのフレージ ングから霊感を得つつ、ミュートは付けずに“素の”サウンドでレコーディングにのぞむことに 決めました。同様に、ロシアの作曲家レインゴリト·グリエールの〈子守歌〉でも音色の問題が 生じました。この曲では、ミュートをつけ、さらにトランペットのベルを布で覆って演奏しまし た! 本盤では、曲ごとに異なる呼吸法を見出していらっしゃいますね。フランソワ·クープラン の[チェンバロのための]《神秘的なバリケード》(『クラヴサン曲集第2巻』第6オルドルか ら)でもそれを成し遂げているのは、とても信じがたいことです! 呼吸を駆使して音楽の 連続性を保ち、なおかつ原曲の快活なテンポや複数の旋律線の重なり合いを再現してい ます。どのようなアプローチをなさったのですか? ロマン·ルルー:切れ目を感じさせない自然な呼吸を維持するのは非常に難しいのですが、 次第に長くなってくフレーズに呼吸を適応させるべく、様々な“トリック”を用いました。
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