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39 ロマン・ルルー | トマ・ルルー パスティーシュ[作風や様式の模倣]の概念は、本盤の一部の楽曲へのお二人のアプロー チと関連しているのでしょうか? 一部の楽曲は、両大戦間に台頭した新古典主義の精 神にのっとっていますが…… トマ·ルルー:パスティーシュからは霊感を得ていません。分析的な視点から編曲を行ったわ けではないからです。じっさい私たちは、二つの楽器の音色の問題に精神を集中させ、軽や かで“真珠のような”響きを得るために最適な方法を一心に探求しました。先ほど話題にの ぼったヘンデルの《パッサカリア》が、私の大好きな楽曲の一つであるのも、多彩なコントラス トと強弱表現と音色の探求を象徴しているからです。 つまるところ、お二人の音楽哲学はバロック時代の音楽家たちのそれに近いということで すね。彼らは音楽を、娯楽芸術——娯楽という語がもつ最も崇高な意味での——とみなし ていましたし、バロック音楽の意図的な軽やかさは、奥深さではなく重々しさと対極をな すものでした……。また、お二人の心を惹きつける即興演奏の魅力は、私たちの目には、バ ロックとジャズの世界を橋渡しするものとして映ります。 ロマン·ルルー:その通りです。私たちの選択や嗜好は直感的ですし、コンサートでの実際の 演奏を通して、聴衆に“受けがいい”曲を探し出します。その好例が、ブラジルのギター奏者ル イス·ボンファによるスタンダード·ナンバーの一つ、《カーニバルの朝》です。私はこの曲を、マ イルス·デイヴィスへの“会釈”としてミュート付きで演奏しています。

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