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弦楽四重奏曲 全曲

47

の孤独においてである。そこではまた、一見構崩れたようにみえる激しい書法によって

こなごなになってしまうような形式を、ためらいなく探求しているのである。

思いがけない曲集、作品

81

を形作っているのは、

弦楽四重奏のための四つの小

である。

アンダンテ

ホ長調(第一番) 、

スケルツォ

イ短調(第二番)は、

二つとも

1847

年の作曲である。

カプリッチョ

ホ短調(第三番)は

1843

年に、

フーガ

変ホ長調は

1827

年に書かれている。これらの作品はもともと独立し

たものだったが、

1850

年にユリウス・リーツによって編纂され、一つの作品番号の

もとに出版された。このコンピレーションは、あまり当を得ているとは言えないが、

一貫性のないなかにも大変に異なった性格の珠玉の名作を提供している。

しかし最初の二曲(『アンダンテ』と『スケルツォ』)は、はじめ弦楽四重奏曲として

構想されたが、結局全体としての作品は日の目を見ることがなかった。おそらく、

ファニーの死によってこの計画が放棄されたのであろう。そのかわりに、ヘ短調

の弦楽四重奏曲が生まれた。

ホ長調の

アンダンテ

は、変奏曲(テーマとヴァリエーション)となっており、見

事に密度が濃い表現を見せている。このような技巧性は、ハイドンのテクニックを

彷彿させる。

スケルツォ

では、ロマン主義の作品全体に顔を見せている「エル

フ(妖精)」の世界にインスピレーションを得ている。この短い曲にみられる濃厚な

半音階手法からは、後にワグナーがオーケストラで書いた息の長いパッセージ

の調性展開さえ想起することができる。

カプリッチョ

ホ短調は、前奏曲とそれに

続くフーガからなっている。メンデルスゾーンのピアノ曲における詩的作品の中

心的な小品集『無言歌』の性格をもっている。

フーガ

は見事に巧妙に書かれてい

るが、これはメンデルスゾーンが何よりも評価していた古典的手法へのオマージ

ュである。