Background Image
Previous Page  43 / 56 Next Page
Information
Show Menu
Previous Page 43 / 56 Next Page
Page Background

メンデルスゾーンの最初の二つの弦楽四重奏曲、作品

12

13

は、それぞれの違いを超えたところで、ある共通性を

示している。それは、ベートーヴェンを模範とし、時には引

用していることである。具体的には、全体的にソナタ形式を

尊重した上で、風変わりにも循環形式の要素を使用している

こと、バッハから借用し、モーツァルト、ハイドン、そして

特にベートーヴェンによって濾過された対位法的な書法、さ

らに、ベートーヴェンのスケルツォを、カンツォネッタやイ

ンテルメッツォの形で優雅かつ軽快に刷新していること等々

が挙げられる。ベートーヴェンの効果的エネルギーをこのよ

うに詩的に変容させること(それは『真夏の夜の夢』の序曲

にみられる、かつてない交響的色彩によって称揚されてい

る)は、おそらく、メンデルスゾーンが音楽全体にもたらし

た最も本質的な寄与であろう。それは、当時の音楽だけでな

く、現代の音楽にも言えることなのだ。今まさに、メンデル

スゾーンの音楽の繊細なニュアンスを再発見し、それにふさ

わしい地位を与える時が来ているのである。

弦楽四重奏曲 全曲

43