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42 ベルク | ブラームス | プーランク | シューマン 本盤の幕開けを告げる、プーランクの《クラリネット・ソナタ》は、全収録曲の中でもっとも“ 最近の”楽曲です。ポルタル氏は1971年にも、このソナタをジャック・フェヴリエと録音なさ っていますね。そのうえ貴方は、作曲者プーランク本人とも交流をもち、彼の前で演奏した ことがあります…… ミシェル・ポルタル : プーランクから演奏にかんする助言を得ましたが、どれもかなり指示的 であったことを鮮明に覚えています。彼は何よりも“上向きの”サウンドを求めていました。この 曲では、演奏を緩やかに前進させつつ、絶えず“運動”の中に身を置く必要がありますが、その さいに“ジャズ風に”してはなりません。私は、プーランクから沢山のことを学びました。ジャッ ク・フェヴリエは録音のさいに、厳格にテンポが守られることを望みました。それは、初演者で あるベニー・グッドマン[ジャズ・クラリネット奏者]とレナード・バーンスタインの作品観とは、 かけ離れています。 ミシェル・ダルベルト : プーランクは優れたピアニストでした。素晴らしい音楽的教養を身に つけていた彼は、巧みに曲を創りましたが、ある種の限界を突破することは決してありません でした。ありあまる能力は、“天才性”を保証するわけではないのです。しかもプーランクは、サ ン=サーンスと同様、ごく若い頃に音楽家としての成功を手にしました。音楽評論家アラン・ ロンペックの言葉を借りるなら、プーランクは、その妙技が天才性の手前で足を止めている 作曲家の一人です。演奏者から見れば、彼の音楽は、実に素晴らしく書かれているだけでなく 非常に指示的です。たとえば彼の作品では、ルバートも可変性も、ごくわずかしかみとめられ ません。演奏者は大前提として、綿密に定められた枠の中にとどまることになります。このフラ ンス音楽に特有な“枠”を“はみ出す”よう私たちを促すのは、ドビュッシーやラヴェルのような 一握りの作曲家だけです……。

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