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ジョフロワ・クトー
この文章は、「新音楽時報」に掲載された記事『新しい道』の抜粋であ
る。1853年10月1日にブラームスと初対面したロベルト・シューマンが、その
数週間後に書いたものだ。
シューマンは、“一目惚れ”した「若き天才」ブラームスを称えた。この時シ
ューマンが受けた、稲妻の様なあまりに大きな衝撃を喩えられるのは、た
だ自然現象のみだった。その熱を帯びた叙情的な文章からは、20歳のヴ
ィルトゥオーゾの才能に対する愛情がにじみ出ている。ブラームスは当時、
まだ「軽やかで丈の短い灰色の上衣に身を包んだ、高い声と美しい長髪、
エネルギッシュな表情と深く真剣な眼差しを備えた子供」(アルベルト・ディ
ートリヒ)の様な容貌だったという。
シューマンの筆はさらに、ブラームスの作品がその後も宿し続けることにな
る、ある種の力強さの存在をも指摘している(それがまた、自然界から引き
出される力強さでもあることは、ロマン主義という時代の必然と言っていい
だろう。)