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33 ヴァネッサ·ワーグナー | ウィレム·ラチュウミア ヴァネッサ・ワーグナー:その精神が、暗い哀調や、太陽のように輝かしくも悩ましげな印象 を生み出しています。だからこそ本盤では、この甘美で不思議な《リンダラハ》を、不安を掻き 立てる《ラ・ヴァルス》の前に置きました。 ラヴェルの《ラ・ヴァルス》の劇的な緊張感を、どのように受けとめていますか? ウィレム・ラチュウミア:低音のとどろきや暗い色彩は、戦争の影を感じさせます。そして私た ちは、大きな波のような、陶然とさせる音の運動に呑み込まれます。 ヴァネッサ・ワーグナー:《ラ・ヴァルス》を演奏するたびに、タイタニック号を連想せずにはい られません。船が沈没し始め、悲劇が迫り来るなか、船内の男女が踊り続ける姿を想像して しまいます。ラヴェルの譜面が聞かせる和声、不協和音、リズム、そして止めどない低音が、 そのような光景を暗示しています。

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