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32 PIANO TWINS ドビュッシーとラヴェルの音楽言語の違いは何でしょうか? ヴァネッサ・ワーグナー:二人の音楽は、いずれも実に官能的ですが、ドビュッシーの官能性 は、より悩ましい色調と、いささか病的な優しさを湛えています。ドビュッシーの作品におい て、明白なものは何一つありません。楽譜の奥深くに隠された——時に皮肉の利いた—— 要素の数々を、見抜いていかなくてはなりません。 ウィレム・ラチュウミア:ラヴェルが時計職人の世界に魅了されていたことに、いつも私は思 いを馳せます。じっさい彼は、精密さや正確さへのこだわりゆえに、幾度も自作に手を加えて いましたし、その書法は、この上なく精巧な印象を与えます。 ドビュッシーもラヴェルもスペインに惹かれていました。そのあかしが、ラヴェルの有名な《 ハバネラ》であり、ドビュッシーの秘められた《リンダラハ》ですね…… ウィレム・ラチュウミア:ドビュッシーはスペインを訪れたことがありませんでした。それでも ファリャは——特に《グラナダの夕暮れ》を聞いたあとに——、ドビュッシーこそスペインの エスプリを表現できる唯一の作曲家だと述べていたそうです。それはまさに、ガルシア・ロル カが説いたスペイン的精神“ドゥエンデduende”に通じます。

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