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58 ベルク | ブラームス | プーランク | シューマン ミシェル・ポルタル(1935-) ミシェル・ポルタルは、音楽界が擁する幾つもの領域が交差する場所で、独自の道を切り 拓いてきた。おそらく彼は、20世紀後半のヨーロッパの音楽シーンを取り巻いた美学的 な諸問題に、真っ向から取り組んだ演奏家の一人だろう。じっさい彼は身をもって、伝統 的な分業(ソリスト、演奏家、作曲家)に疑問を呈し、器楽的実践と向き合ってきた。 フランス出身のクラリネット奏者、サクソフォン奏者、作曲家であるポルタルは、クラシック・ジ ャズの両分野で名声を博する多才な器楽奏者である。モーツァルト、ブラームス、ベルクはも とより、ブーレーズ、シュトックハウゼン、ベリオ、カーゲル、さらには華麗な受賞歴をほこる映 画音楽作曲家たちの作品を奏でるポルタルは、他方で、20世紀のフランスおよびヨーロッパ のジャズ・シーンを代表する一人でもある。 この上なく霊感に富んだソリスト・室内楽奏者であるポルタルの演奏は、明快かつ厳密な楽 曲解釈と、他に類をみない表現力を兼ねそなえており、紛れもなくそれが、彼を従来の演奏家 が歩む道から遠く引き離している。かねてから音楽のマンネリ化を拒んできた彼は、即興の折 には自らのイマジネーションとファンタジーを自由に駆け巡らせる——そのさい、クラリネッ トの代わりにバンドネオンやサクソフォンを演奏することもある。 クラシック界でもジャズ界でも名を知られ、引く手あまたのポルタルは、これまでクラシック・ ピアニストのマリア・ジョアン・ピリス、ブルーノ・カニーノ、ミシェル・ダルベルト、ジャズ・ピア ニストのボヤン・ズルフィカルパシチ、ジャッキー・テラソン、アコーディオン奏者のリシャール・ ガリアーノ、ジャズ・ドラマーのダニエル・ユメール、ジャズ・ベーシストのベブ・ゲラン、アンリ・ テキシェらと共演している。

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