LDV154

50 バッハ | ゴルトベルク変奏曲 BWV988 ジョフロワ・クトー ブラームスとその先へ…… ジョフロワ・クトーの芸術家人生の中心には、ヨハネス・ブラームスがいる。彼は、自身の 最も壮大な録音プロジェクトでブラームスを取り上げ、世界各地のメディアから称賛を浴 びた。この作曲家に対して彼が愛情と情熱を抱くようになったきっかけは、13歳の時に 出会った《6つの小品》作品118だった。「ブラームスのおかげで、私は自分が音楽家であ ると実感できます」と語るクトーは、これほどブラームスに惹きつけられる理由を言葉で 説明することができないでいる。とはいえ、ブラームスとの結びつきが、クトーの音楽世界 を独占しているわけではない。じっさい、現代曲にまで及ぶ彼の幅広いレパートリーのも う一つの大きな柱が、ヨハン・セバスティアン・バッハである——もっともクトーは、長らく バッハの音楽に畏怖の念を抱いていたのだが。 クトーは、バッハの音楽を活気づけている舞踊の身振りを自らの体内で感じ取っている。と いうのも、かつて体操選手を目指して高度な練習に励んでいたクトーは、常に音楽ともフィ ジカルな関係を育んできた。「私はスポーツのおかげで、人生の幾つかの局面を乗り切り、 自らの身体や感覚に耳を傾けられるようにもなりました」と、彼は語る。 ほぼ偶然にクトーの人生に入り込んだピアノは、彼が青年期を迎える頃には掛け替えのな い存在に変わっていた。彼はパリ国立高等音楽院でミシェル・ベロフとドゥニ・パスカルに 師事し、錚々たる巨匠たちのマスタークラスでも研鑽を積んだ。クトーの演奏家としての歩 みの中で、決定的な転機となった出会いがもう一つある——彼はニコラ・アンゲリッシュの もとで、自らの演奏技術を磨き上げた。「今も、亡きアンゲリッシュ先生に思いを馳せない日 はありません」と、クトーは言う。

RkJQdWJsaXNoZXIy OTAwOTQx