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51 ヴァネッサ・ワーグナー 今回の貴方の“物語”を形作っているのは、幾つもの自律した“短編”です。したがって弾き 手は、数分の内に一つのムードを確立し、その後すぐに次のムードへ移行しなければなり ません。そして同時に、これら一連の小品に、ある種の劇的な一貫性をもたらす必要もあり ます。 私は、そのように刻一刻と変化するムードをこよなく愛しています。それは、春の日々を—— 時が流れるにつれ、さまざまな光や色を見せる春の空を——想い起こさせますし、私自身の 性格にも通じます! 私は気分屋で、喜んだ途端に憂鬱になったり、呑気なことを言った後 に物思いに沈んだりしますから……。そのような“むら気”は、本盤に収めたコントラストに富 んだ曲集の中にも見出されます——弾き手は、それぞれの曲に固有なムードを瞬時に創り 出さなくてはなりません。ある意味では、それらは私の心の状態を鏡のように映し出します。 今回私は、はじめに、一枚のアルバムには収まらない数の曲をレコーディングしました。そこ から収録曲を厳選し、自分が辿ってみたい物語の流れにふさわしい曲順を練りました。本盤 で作曲家たちが描き出す種々の情景は、私には、どれも1冊の長い日記を構成するさまざま なページのように感じられます。

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