35 ヴァネッサ·ワーグナー | ウィレム·ラチュウミア 実にカラフルな内容の本盤は、サティの極めて簡素な書法とともに幕を開け、幕を閉じま す。これら2曲は、本盤で何を象徴しているのでしょうか? ヴァネッサ・ワーグナー:私たちデュオのアメリカ・プログラムへの密かな橋渡しです。私たち は、サティがミニマル・ミュージックや反復的な音楽の先駆者であることを示唆すべく、コン サートのアンコールで〈始め方〉を頻繁に弾いています。サティは、同じパッセージが840回 も延々と繰り返されるピアノ曲《ヴェクサシオン》も書いていますしね! 彼は革新的な作曲 家ですが、過小評価されてきました。その音楽は、同時代の主流とほぼ対立しています。どこ までも簡明な音楽言語を通して彼が表現する絶望と憂愁は、私の心を強く揺さぶります。《 ラ・ヴァルス》と《海》で大量の音がほとばしった後、まるで一つの物語が終わるように、《ジム ノペディ》の繊細なノスタルジーがこのアルバムを閉じます! ウィレム・ラチュウミア:デヴィッド・チュードアらと《ヴェクサシオン》を世界初演したジョ ン・ケージは、サティをモダニズムの偉大な旗手の一人とみなしていました。音楽学者ポー ル・グリフィスは、《牧神の午後への前奏曲》が20世紀へ向けて現代音楽の扉を開いたと評 しましたから、この曲のプリズムを通してサティの音楽を提供することは、的を射ていると思 えました。しかも、本盤に収めた《ジムノペディ 第1番》の2台ピアノ版は、ドビュッシーの編曲 による管弦楽版をもとに私たち二人がアレンジしたものです。編曲の編曲……少し風変わり でしょう? サティ自身が変わり者でしたから、彼の“エキセントリックさ”に、私たちなりにア プローチしたつもりです!
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