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33 あなたがこれまでに発表した録音は、あなたが築き上げたレパートリーの中でショパンと シューマンの作品がとりわけ重要な位置づけにあることを示しています。シューベルトの 音楽は、あなたにとってどのような存在でしょうか? 私がシューベルトの音楽に初めて触れたのは5歳のとき、あるいはおそらく7歳のときです。《 「未完成」交響曲》を聞いて衝撃を受けたことをおぼえています。彼の作品は、私の中で特 異な位置を占めています。なぜなら、その演奏には特殊なアプローチが必要とされるからで す。あらゆるロマン派の作曲家たちの中で、唯一シューベルトの音楽が、この上なく深い内 観を求めてくるのです。私自身の話をすれば、彼の作品を演奏する上で、成熟が貴重な助け となりました。というのも私は、年を重ねてから、初めて彼のいくつかの作品の深みを理解 することができたからです。先ほど述べた“内観”をとおして、彼の音楽の真髄――つまり苦 悩――があらわになります。これこそが、シューベルトの音楽は本当の意味で“人に教える” ことが出来ないと私が考える理由の一つです。 ジャン=マルク·ルイサダ

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