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32 あなたは、かなり若い頃からシューベルトの表現様式に強く心惹かれた稀有なピアニス トたちの一人です。それはあなたが、パリ国立音楽院に入学する以前にフランス国外で学 び、多くの偉大なシューベルト弾きたちと出会っていたからでしょうか? 私はパリ国立音楽院に入る前に、ロンドンに近いユーディ・メニューイン音楽学校への入 学を許され、3年間、ドゥニズ・リヴィエール先生とマルセル・シャンピ先生のもとで――二 人ともメニューインと近しい関係にありました――学びました。芸術的な厚みをほこる同 校では、パリとは異なり、シューベルトの音楽が目をみはる存在感を放っていました。ある 意味では、私の感性はピーター・ピアーズとベンジャミン・ブリテンが演奏した《美しき水車 小屋の娘》の思い出によって育まれました。しかも私は、二人の前で演奏したこともありま す。あのときピアーズとブリテンの演奏が体現していた、シューベルトの強烈で自然な音楽 を、それ以来私は一度も聞いたことがありません。私の人生でもっともインスピレーション をさずけられた出来事の一つでしたが、当時の私は、それが自分にとって決定的な体験で あることに気がつきませんでした。 シューベルト / D.840 & D.960

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