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30 シューベルト︱『ロザムンデ』•『死と乙女』 第3楽章〈メヌエット〉は、聞く者を虜にする名曲です。私たちは、深淵に呼びかけるかのよ うなチェロのうめき声を耳にしながら、シューベルトの音楽を覆う神秘の核心に触れま す。 レコーディングでは、歌曲《ギリシャの神々》の冒頭が引用されているこのメヌエットに悩ま されました。というのも、テンポや曲調の点で、さまざまなアプローチが考えられうるからで す。この楽章は、軽やかさを前面に押し出すべき舞曲なのでしょうか?あるいは、他の楽章よ りもいっそう闇が深い音楽なのでしょうか?この曲は一見するとワルツに似ています。しか しシューベルトは、きわめて暗い色調を用いることによって、ウィンナー·ワルツを不可思議 で幻想的な何かに変容させています。田園的で朗らかなトリオと、のどかで素朴な民衆の 祭りを想わせる晴れやかな終楽章が、鮮やかなコントラストを生んでいます。
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