LDV85
エルメス四重奏団 27 それぞれの変奏を、どのように捉えていらっしゃいますか? 第1変奏の震えるような高音は、自身の運命から逃れようとする乙女を暗示しています。第 一ヴァイオリンは全体をわずかにリードし、他のパートよりもやや先を進まなければなりま せん。それによって、効果的な切迫感が生まれます。 チェロの歌声が空高く舞い上がる第2変奏は、濃霧がたちこめる死の森の情景を描写して いるかのようです。第3変奏は荒々しい狩りを想わせます。霊妙でしなやかな蛇行を特徴と する第4変奏は、天上のイメージと重なり合います。やがて曲調が暗くなると、驚くべき書法 を聞かせるチェロ主導のパッセージが、奏者たちに複雑なリズムを突きつけます。 終盤では再び長調が響き、死後の光が湧出します――それは慰めをもたらす超越的な死 と言えます。
RkJQdWJsaXNoZXIy OTAwOTQx