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四手連弾と2台ピアノによる演奏で抱く感覚は、大きく異なるのでしょうか? セドリック·ペシャ : 第一の違いは、各自の奏者が活用できる空間の大きさです。四手連弾 では、右側にしろ左側にしろ、必要不可欠な空間を絶えず奪われているような感覚を抱き ます。いっぽう、2台ピアノで演奏する時には、普段の独奏の際に手にしている空間と快適さ を、引き続き得ることができます。とはいえ、2台ピアノの場合も四手の場合も、音のコントロ ールは等しく難しい課題です。音のバランスの問題に難なく向き合えるようになるには、多く の経験が必要です。また2台ピアノという演奏形態では、奏者同士が離れた場所にいます。 四手連弾では、互いの息づかいを感じ、互いの手を見ることによって、より容易に演奏を合 わせることができますから……。とはいえそれは私たちにとって、さほど厄介な問題にはなり ませんでした。なぜなら私とフィリップは、ごく自然で奇跡的とも言えるような“阿吽の呼吸” を、これまで徐々に育んできたからです。 2台ピアノという演奏形態は、興味深い音響経験をもたらしてくれます。たとえば今回テルデ ックス·スタジオでは、すぐさま録音技師から、2台のピアノの蓋を完全に取り外すことを提案 されました。これはコンサートには全く適さない試みですが――音には上へ向かう傾向があ るため、蓋がないと聴衆に音が届きません――、レコーディングには支障はありません。こう して私は、心地のよい演奏を経験し、素晴らしい感覚を抱くことができました。なぜなら2台 のピアノの音が、文字通り溶け合ったからです。

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