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セドリック・ペシャ, フィリップ・カサール, ピアノ 45 この曲を鍵盤打楽器のみで演奏するに当たり、オーケストラの種々の音色をどのように 表現し分けていますか? セドリック·ペシャ : 確かにリスト本人が、オーボエの音色、弦楽器の滑らかなヴィブラー ト、ピッコロ、大太鼓などをピアノで模倣したいと望み、じっさいにそれを試みています。この 編曲版が奏者に突きつける大きな課題の一つは、声楽、つまり独唱と合唱の再現です。ピ アノが歌詞を表現しているような錯覚を聞き手に抱かせるのは、至難の業です。あの最初 のバリトン独唱が、聴衆とオーケストラを相手に華々しく訓示しながら、曲に劇的な急転を もたらすさまを、どのように鍵盤上で再現すべきでしょうか?第4楽章の終盤で、合唱を伴 わずに仰々しく歌う4人の独唱者の様子を再現する際に、ピアニストはどのような技巧を用 いることができるでしょうか?……私自身は一貫して、ドイツ語の詞を心の中で歌うよう努め ています。それによって、詞の抑揚やアーティキュレーションを、ある程度まで表現すること ができるからです。編曲の演奏時に限らず、日頃から私は、ピアノ以外のさまざまな楽器を 反射的に想像したり、即座に抑揚をつかめない旋律に反射的に詞を付けたりしています。

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