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セドリック・ペシャ, フィリップ・カサール, ピアノ 43 この編曲版を演奏する難しさは、主にどこにあると思われますか? フィリップ·カサール : 何より、もっぱらテクニックの観点からみて難曲です。長時間、譜面 を正確に音にするだけでも一苦労ですから!この編曲版は、どこをとっても演奏の難易度 が高く、特に 終楽章では、闘い続けてヘトヘトになります。一息できる瞬間など皆無です。 第3楽章〈アダージョ〉でさえ、この上ない集中力が求められますし、互いの演奏をできるか ぎり注意深く聞き合わなければなりません。しかし、技術的な要素以上に厄介なのは、2台 の楽器のどちらかが突出して聞こえないよう、音量のバランスを保つ作業です。 さらに、奥 行きのある立体的な響き――オーケストラのような響き――を聞いているような錯覚を生み 出すべく、空間を有効に利用しなければなりませんし、この作品の長所を引き出す適切な 音色、ペダルの長さ、響き、さじ加減を見極めなければなりません。 セドリック·ペシャ : まず個々のパートの次元で、かなり手ごわい作品です。速いパッセ ージで求められる超絶技巧の点でも――譜面には、オクターヴ、3度音程、跳躍、反復音 など、あらゆる“難所”が散りばめられてもいます――、より緩やかなパッセージで求められ る叙情性の表現の点でも……。たとえば第3楽章〈アダージョ·モルト·エ·カンタービレ〉で、 息の長いフレーズを次々に歌わせるのは賭けも同然です。これほどまでに純粋な楽章に おいては、あらゆる“ひけらかし”の追求を断念し、音楽をそのまま語らせなければなりませ ん。フィリップと私は、この編曲版に記されている強弱の指示が驚くほど少ないことに気づき ました。それは、演奏者が独自に強弱を考案して加えることを推奨しているわけでは決して ありません。むしろ演奏者は、細部に気を取られすぎることなく、曲全体の大きな流れを意 識するよう促されているのです。

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