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セドリック・ペシャ, フィリップ・カサール, ピアノ 41 ピアノ書法に関する質問です。この編曲版からは、リストの作品とベートーヴェンの作 品、どちらを演奏している印象をより強く受けますか? セドリック·ペシャ: ベートーヴェンのピアノ作品に典型的な書法は、ごくわずかしか見出 されません。彼らしい“風変わりな”表現、彼特有のピアノの扱いは、いっさい見当たらない のです。9つの交響曲の編曲において、リストがベートーヴェンのピアノ音楽の響きを模倣 しようと努めたようには思えません。おそらくそれはベートーヴェン自身が、オーケストラと その特殊な音色を直に念頭に置きつつ、一連の交響曲を構想したことに起因します。彼 は、他の作曲家たちのように、先に鍵盤上で作曲した“素描”を管弦楽化したわけではな いのです。 ちなみに、第9番と、ベートーヴェンの同時期のピアノ作品群のあいだに類似点が多々み とめられるのは興味深いことです。いずれにおいても、対位法的な書法が大いに発展させ られていますし、たとえば第9番の第3楽章の叙情性は、最後のピアノ·ソナタ作品111の〈 アリエッタ〉と呼応し合っています。

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