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グザヴィエ・フィリップ / アンヌ·ガスティネル 39 アンヌ·ガスティネル : オッフェンバックの二重奏曲はとにかく見事に書かれています。 旋律の面でも、技巧的な可能性の面でも、チェロという楽器の長所を十二分に引き出す作 品に仕上げられています。グザヴィエも私も、オッフェンバックの二重奏曲の何よりの難しさ が、各パートにあらわれる華麗な超絶技巧だけでなく、その伴奏にも潜んでいることを確信 しました。いずれのパートにも、技術的な見せ場に挑む瞬間と、伴奏に徹する瞬間が、絶 えず交互にやってきます。この交替こそが、最も手ごわいのです。奏者は、前面に立つより も、後方で伴奏を担う方がいっそう難しい場合もあるのだという事実に、すぐさま気づかされ ます。 グザヴィエ・フィリップ : オッフェンバックの二重奏曲は、この“共有”の精神に貫かれ ています。おそらくはそこに、彼の革新性があります。ソリストと伴奏者という不動で古典的 な役割分担から、かけ離れているからです。そこにあるのは、“今は貴方が弾く”“次は私が 弾く”という、絶え間ない役割の交換です。先ほどアンヌが述べたとおり、伴奏は実に難し い任務です。単に目立たないように弾けば良いという訳にはいきません(そうであれば、あ まりに容易な任務です)。真の伴奏者は、“節度ある”発言を練り上げ、細部を活かしてパン チを効かせ、パートナーのためにリズムを見出し、相手を前へと進めます。だからこそオッ フェンバックの二重奏曲は、これほどまでに魅力的なのです。一方の奏者が凄まじい超絶 技巧に精神を集中させているあいだに、伴奏を受けもつ者が活気を生み出し、パンチを効 かせ、その瞬間を“謳歌”します。

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