65 次第に楽器に汚れがたまり、また大聖堂を訪れる観光客の激増にともなって湿気や埃が楽 器に負担をかけるようになると、早くも1980年代初頭には楽器のコンディションが著しく悪 化し、全面的な改修が必要視されるようになった。こうして1990~1992年に実現した大改 修を任されたのが、オルガン製造社のボワソー=カティオー、エメリオー、ジルーの三社で、コ ンピューター機能の面でシナプテル社も助力した。 近年の2012・2014年には、カティオー社とクワラン社がノートルダム大聖堂のオルガンの 改造を行っている。このとき、カヴァイエ=コルの“半円型ひな段式”コンソールとコシュロー のアメリカ式コンソールを繋ぐ新たなコンソール(エルテック社の制御機構付き)が設置され た。また“小ペダルpetite pédale”が2オクターヴ拡張され、手鍵盤からの演奏が可能に なり、これによって全鍵盤上から独立して作動させることができる“浮動の”ディヴィジョンが 新たに生まれることになった。 今日もなお、昨今の修復作業が、ノートルダム大聖堂の大オルガンの数世紀来の伝統と最先 端のテクノロジーを結びつけている。この楽器は、いわば過去と未来の交差点に立ちながら、 大聖堂に多彩な音色を響かせ、日々これを聴きに訪れる多くのひとびとを魅了しているので ある。 オリヴィエ・ラトリー
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