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オリヴィエ・ラトリー 31 本盤のタイトル『バッハ・トゥ・ザ・フューチャー』は、いくばくか挑発的な印象を与えます。 まずはアルバム全体のコンセプトについてお聞かせください。 私のねらいは、幾つかのパラドックスに光を当てることにあります。ノートルダム大聖堂はカ トリック信仰の最たる象徴の一つであり、この場所でプロテスタント信仰を礎とする傑作を演 奏するということが、すでに大きな矛盾を生んでいます。さらに、バロック・古典派時代に製 作されたオルガンとは時代も機能も異にする楽器を用いて、バッハの作品に息を吹き込む ことにも、矛盾があります。実際この二点は、深く掘り下げるべき問題でしょう。 しかしながら、私にとってもっとも重要なのは、音楽におけるオーセンティシティ(真正性)の 問題です。実のところ私にはしばしば、この概念が“誘惑の罠”にすぎないもののように感じ られるのです。この問題を図形にたとえてみましょう。オーセンティック(実物に忠実)である ことを望む演奏は、いわば正三角形のそれぞれの角に、作曲家・作品・楽器の三つのパラ メーターを、対等に配置しようとするようなものです。それらの一つ——今回は楽器です—— を変更する場合に、私たちは三角形の重心を動かすことを余儀なくされます。従って、こ のような文脈の中でバッハの作品を演奏することは、三角形の新たなバランスを見出しな がら、作品の精神も内容も保つことを意味しうるのです。両者を切り離すことはできません。

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