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アモリ·コエトー / ジョフロワ・クトー 33 第2楽章〈アンダンテ·トランクィロ〉は、ロマンスあるいは大衆歌のように歌い上げられる。 曲は、そのシンプルな曲調から、陽気な中間部〈ヴィヴァーチェ〉へと移行する。つづいて歌 唱風のセクションへ戻ると、曲調はよりいっそう詩的になり、表情豊かな山場に達する。モ チーフがジプシー風の色彩を帯びると(ヴァイオリンによるピツィカート)、そのまま歓喜の うちに第2楽章が閉じられる。 終楽章〈アレグレット·グラツィオーソ(クァジ·アンダンテ)〉は、やや秋の気配を感じさせる 曲調で開始したのち、こっそりと狂詩曲風になる。主にヴァイオリンに託される主旋律は、 夏の夕暮れを想わせる穏やかな3つのエピソードを聞かせる。この旋律は、ブラームス自身 の《私の恋は緑》からの借用である。これはフェリックス·シューマンの詩にもとづく思い入 れの深い歌曲で、1873年のクリスマスにクララに贈られた。クララは、“ヨハネスのどんな作 品も、これほど私を満悦させたことはない。長いあいだ、こんなにも幸せな気持ちになった ことはなかった”と書いている。随所で“歌”を讃える第1番と第2番のヴァイオリン·ソナタに は、ブラームスとクララの愛情に満ちた関係が映し出されてもいるのだ。

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