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アモリ·コエトー / ジョフロワ・クトー 31 崇高な第2楽章《アダージョ》は、1879年に他界したフェリックス(シューマン夫妻の末子) の思い出に捧げられている。じっさいブラームスは、彼の死にさいしてクララに宛てた手紙 に、この楽章の冒頭数小節を添えている。ピアノが奏でる冒頭は、コラールを想わせる。ある いはそれは、優しさと悲痛さをまとう、厳かで感動的な哀歌だ。これに応えるように、ヴァイ オリンがじつに内省的に主題を受け継ぐ。そして重々しくも雄々しい行進曲が不意に鳴らさ れる。やがてコラールが、感情をいっそうあらわにしながら回帰する。胸を打つコーダでは、 行進のリズムが刻まれ、しばし時が止まったような印象を与える。それはまるで、次第に遠 ざかっていく葬列のようだ。最後の高揚が、第2楽章を締めくくる。 時に熱烈に流れゆく終楽章〈アレグロ·モルト·モデラート〉は、第1楽章の叙情的な性格を 回帰させる。だがその叙情性は、ごくわずかに憂いに沈みながら、内気な微笑みを湛えてい る。ブラームス特有の哀愁を背負った喜び――すべては杞憂だ――が、ここで表現されて いるのだ。控えめに回想される第2楽章のモチーフと、《雨の歌》の旋律が、このどこまでも 優しく繊細なソナタに統一感をもたらしている。

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