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28 ブラームス _ ピアノ五重奏曲 ヘ短調 作品34 / 8つのピアノ小品 作品76 《ピアノ五重奏曲 へ短調 作品34》について ブラームスの作品は、幾度かの試行錯誤を経て、ようやく最終的な形にいたることが多か った。じっさい彼は、1862年にクララ・シューマン、ヨーゼフ・ヨアヒム、ヘルマン・レーヴィの おかげで(あるいは彼らのせいで)自身初の《弦楽五重奏曲 へ短調》を作曲している。結 局、曲は破棄されたが、ブラームスは後にこれを第2版《2台のピアノのためのソナタ》に書き 替えた。後者は作品34bとして広く知られるようになるが、いっぽうの初版(《ピアノ五重奏曲 へ短調》)は、暖炉の火床の中に消えてしまったのである……。 しかし1864年に、ふたたびクララと指揮者レーヴィから背中を押されたブラームスは、今度 はピアノと弦楽四重奏のために、この作品の第3版を完成させた。作曲は1864年の夏のあ いだに進められ、初演は1866年6月22日にライプツィヒで行われた。 4楽章から成る《ピアノ五重奏曲》は、特異な規模の作品である。「ピアノ・パートと弦楽パー トは緊密に連関しています」と、クトーは語る。「この音楽は協奏的というよりも“交響的”とい えるでしょう。幾つもの極小の動機やリズム型が、弦楽パートにもピアノ・パートにも共通して 頻出します。さらにそれらが“登場人物”として、楽曲全体を統一する指導的な構想に統合 されている状態が、絶えず強調されます。」

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