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79 イザイ弦楽四重奏団 ベートーヴェンは、自身の魂を探りながら、新たな種の内省を提 案する——彼の魂は、[“黒の画家”ピエール・]スーラージュの絵 画「outrenoi(r 黒の向こう)」のように、きらめいている。ピアニス トとしてのキャリアを断念したベートーヴェンは、新しい内なる 聴取の形体へ向かっていった。彼は、眼前の儚い世界との関係を 断ち、変わりゆく永遠への入り口を見出した。はからずも自らの身 体が貪り飲んだ鉛の犠牲となった彼は、内面世界で、錬金術のよ うな変質を成し遂げた——病に冒された彼の身体は、今や金を 産出する。だがその金は、「朽ちる外(ほか)ない金よりもはるかに 尊(たっと)い」[「ペテロの第一の手紙」1章7節]、非物質的な金 だ。そしてイザイ四重奏団は私たちを、このえも言われぬ捧げ物 に近づけてくれる。

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