中期の6曲の最後を飾る、1810年の作品95(第11番)は、ベートーヴェンの偉大 な弦楽四重奏曲のうち最も短い。とりわけ波乱に満ちた時期(難聴の悪化、結婚 の破談、2人の庇護者の死)に書かれた同曲は、ベートーヴェンが音楽に託した役 割を丸々体現している。そこには、堅固で揺るぎない意志を注ぎ込めば、運命から のあらゆる打撃を乗り越えられるのだという彼の信念もはっきりと見て取れる。第 3楽章〈アレグロ・アッサイ・ヴィヴァーチェ・マ・セリオーソ〉は、のちの最晩年の弦 楽四重奏曲でベートーヴェンが成し遂げる大胆な革新の数々と宇宙的な飛躍を 予示している。彼はこの第11番ののち、14年間、弦楽四重奏曲のジャンルから離 れることになる。 75 イザイ弦楽四重奏団
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