LDV600-6

感情は第4楽章〈ドイツ舞曲風〉で極みに達する。8分の3拍子は全声部で3つの8 分音符によって絶えず活気づけられているが、ベートーヴェンは、そのうち3つ目の 8分音符(第1ヴァイオリン・パートでは16分音符)を抜き出し、無呼吸状態を彷彿 させるフレージングの中で、モチーフに差異を与えている。その後、リズム書法によ って示される断続的な呼吸が、音楽の流れに一連の短い中断をもたらす。それは 他の楽器に浸透しつつ、有り余る感情によって引き起こされるかすかな失神を印 象づける。その効果は実に感動的だ。というのもこの楽章において、ベートーヴェン の旋律の才——しばしば報われない才とされる——は、燦然と輝いている。その 才は、モーツァルトやシューベルトの作品に見出されるピュアな音楽性に何ら屈す ることなく、建築的な力を絶えず保持してもいる——突飛なシンコペーションを用 いてリズムを乱す変奏によって、旋律素材の可能性を探らずにはいられない建築 家的な精神が垣間見えるのだ。 73 イザイ弦楽四重奏団

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