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第4楽章では、ベートーヴェンが曲の“原材料”の鍛造の過程で穏やかにしたロシ ア民謡の主題が、次第に元来のかたちを取り戻す。束の間、完全にロシア人と化し たベートーヴェン(第177小節)に、曲の依頼主ラズモフスキー伯爵も悪い気はし なかったに違いない。しかしまたベートーヴェンは、シューベルトを予感させもする (第226小節)。イザイ四重奏団の面々も、これらの変身に巧みに寄り添う。彼ら は、荒れ狂う諸要素のうねりと高揚に意図的に操られる船の舵を握るだけでなく、 ベートーヴェンの特定の思考の旋風に押し流されることもできるのだ。 68 ベートーヴェン | 弦楽四重奏曲(全曲)

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