第2楽章においてイザイ四重奏団は、ベートーヴェンが小節線を無視して奏者間 で引き継がせようとした種々のモチーフの相互作用を完璧に再現し、複数の声を あわせもつ一つの楽器と化す。ばねを伸張させる16分音符の群れは、軽やかに羽 ばたく音の噴出の中に消えていく(第404~419小節)。 イザイ四重奏団は第3楽章で、もう一つのベートーヴェン的な哲学を具現すること になる。ここで彼らは、〈カヴァティーナ〉[《弦楽四重奏曲第13番作品130》第5楽 章]を予示する光をまといながら、まるで神秘のベールを剥がすように演奏するの だ。この“夜の音楽”を耳にすると、パステルナークの一節が頭に浮かぶ:「新たな宗 教に入るかのごとく、この夜を通り抜ける。」弦楽器たちは、各自がそれぞれに異な るリズム的領域を生きながら独自の一貫性を見出す空間へと、実に自然に進展し ていく——ヴィオラは2分音符、第1ヴァイオリンは8分音符、チェロは16分音符 で進み、第2ヴァイオリンの歩みは8分音符のグループによって区切られる(第26 小節~)。あたかも全パートが、いま生まれつつあるもの、どこまでも脆(もろ)く貴 重なもの、新たな啓示の象徴を、ともに慈しんでいるかのように。 67 イザイ弦楽四重奏団
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