ベートーヴェンが自身への戒めとして手記につづったこの言葉 は、一致団結した「幸い」なアンサンブル——イザイ弦楽四重奏 団——が本盤に収めた演奏にも通じるだろう。4人の音楽家たち は、この庭園——ベートーヴェンが言語に絶する金字塔として打 ち建てていくにつれ、小道が分岐していく庭園——の中で、無数 の経路を辿ることができる。同時に彼らは、一人の奏者のごとく呼 吸し、他の楽器編成では決して至れない一体性の神秘を明示す ることもできる。しかも、その一体性が画一性として現出すること は決してない。 61 イザイ弦楽四重奏団
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