LDV60
ウィレム・ラチュウミア 51 楽器に関して、録音の際に何か特別な調整をリクエストしましたか? 特別な調整は一切お願いしていません。私は経験を頼りに、差し出された楽器に順応でき るよう努めています。今回の録音で弾いたのはスタインウェイのD型コンサート・グランド・ピ アノで、素晴らしい楽器でした。ちなみに自宅では、ベーゼンドルファーを弾いています。 どんな楽器でも常に最善の演奏をすべきだというのが私の持論です。1940年代のソ連でプ ロコフィエフが弾いていた酷い状態の楽器に比べれば、現代のピアノに文句など言えませ んしね……。 あなたにとって、ピアノ版の《シンデレラ》にカウエルの作品を織り交ぜることは、カウエル の音楽的な肖像を描くことでもあったのでしょうか? 言うなれば私は、カウエルの膨大な数の作品群の中に、幾つかの道しるべを置こうと試み ました。彼は半世紀以上も前に亡くなっていますが、ジョン・ケージやジョージ・クラムの先 駆者として、まるで探検家のように音の世界を開拓していきました。カウエルの音楽と私の 想像世界には、相通じるものがあるように思います。彼の作品はしばしば、魔法使いや妖 精や宇宙をテーマにしているからです。私は彼の作品を、かなり頻繁に演奏会で取り上げ ているのですが、クラムの作品のようだとおっしゃる方が多いですね。
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