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ヴァネッサ・ワーグナー 31 《詩的で宗教的な調べ》の選曲理由をお話しください。 演奏会で《十字架への道》と組み合わせる楽曲として、《詩的で宗教的な調べ》の数曲を取 り上げるようになったのがきっかけです。演奏するたびに、絶えず交替する2つの精神状態 に心惹かれました。1つは、壮大で誇張的な、時に恍惚とした魂の高揚。そしてもう1つは、 密やかな瞑想にも似た内省です。私にとって、この感情の錯綜こそが、《詩的で宗教的な 調べ》の大きな魅力です。例えば〈死者の追憶〉の冒頭では、ピアノの最低音域で曲がりく ねった道が描き出されます。その後の宗教的典礼を経て、抒情的で驚くほど雄弁なフィナ ーレが最後に現れます!それはまさに、簡素さの極みから、至上の恍惚へと向かう秘儀的 な進展です。私は録音に先駆けて、これらの作品を何度も弾きました。なぜなら、長い時 間をかけて“熟成される”べき音楽だからです。《詩的で宗教的な調べ》は超絶技巧の彼方 で、内的な進展、言うなれば哲学的で内省的な旅を、奏者に求める音楽なのです。 リストのアイデアの源泉となったラマルティーヌの同名の詩集を読み込む必要 性は感じましたか? この詩集を若い頃に読み、とても気に入りました。しかし、リストの《詩的で宗教的な調べ》の 準備段階で再読したものの、すぐさま距離を置いてしまいました。私にはラマルティーヌの 詩があまりに抒情的で“青っぽく”感じられたからです。リストの音楽作品は、その霊感の源 となった詩集をはるかに凌駕している、というのが私の持論です。

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