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ジャン=フィリップ・コラール 43 ラフマニノフの作品は、貴方のレパートリーの軸の一つです。なぜ貴方は、たび たび彼の音楽に立ち返るのでしょうか? 私はいつの時も、ラフマニノフの率直な表現に惹かれてきました。彼のピアノ音楽は、心に 直に訴えかける、驚くべき明快さを湛えています。その理由はおそらく、ラフマニノフ自身 が、自らが得意とする楽器に己の感情を吐露したいと望んでいたからでしょう。彼は心の内 をそのまま音に託しており、その心が常に鍵盤上に現れてくるのです。しかしながらラフマ ニノフの音楽は、美と、美が差し出す素直な感情を備えているだけでなく、内省の場でもあ ります。私たちはそこで、存在をめぐる実に暗澹とした思索に接するのです。つまるところ、 ラフマニノフは亡命者でした。彼は霊感の源であった祖国ロシアを離れる際、ロシアの魂を 置き去りにはしなかったのです! ピアニストにとって、ラフマニノフはとりわけ魅力的な存在です。何よりも彼自身が、優れた ピアニスト——そして私のような大きな手をもっていました——でした。彼は、理想的な指の運 びを知り尽くした上で、その可能性を余すところなく追求しました。 しかし、私が決まってラフマニノフの音楽に立ち返る大きな理由は、彼の“ピアノの響かせ 方”にあります。彼以前に、あれほど管弦楽的に、そしてあれほどの迫力でピアノを響かせ た者はいなかったはずです。彼は、言うなれば音楽的・技術的な陶酔と、真の喜びを創出 しています。“どの作曲家に会ってみたいか”と聞かれたら、私は迷わずラフマニノフと答え ます。彼がピアノを弾く姿を見て、その演奏の力強さを体感してみたいからです。ラフマニ ノフには、聴く者を即座に感動させる音楽を書く才能がありました。技術面での“離れ業”と 力強いサウンドによって、極めて壮大な次元をもつ作品を世に問うたのです。私たちは、彼 の音楽にただただ魅了されるしかありません!

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