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ホアキン・アチューカロ 37 《舟歌》と《幻想即興曲》は、この朗らかな前奏曲とは全く異なる音楽世界を呈してい ます。これら二曲を演奏する難しさはどこにあると思われますか? さきほど私は《前奏曲集》が一つの巨大な作品であると述べましたが、この言葉は《舟 歌》にも当てはまります。この曲の特長は、信じられないほど革新的な和声語法、クライ マックスへと向かう歩み、そしてラヴェルが絶賛したコーダであるといえます。リズムとテン ポの変化への配慮は言うまでもありませんが、《舟歌》が演奏者に突きつける最大の課題 は、輝かしい大団円に至るまで、一つの弧、一つの首尾一貫した音楽の進展を維持す ることにあります。 《幻想即興曲 作品 66 》は、私がごく若い頃から演奏し続けてきた作品の一つです。時に この曲の性格は、誤解されているように思います。“見事な指さばきで”この作品を演奏 するだけで満足するなど、言語道断です。《幻想即興曲》では、動揺と不安に満ちた、あ る種のドラマが展開されていきます。さらに奏者は中間部において、巧みにすべてを一 新させなければなりません。

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