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貴方は、演奏会で決してマズルカを弾きません。 一度も弾いたことはありません。極めて稀な例外として、ある特殊な公演で演奏したこ とはありますが……。しかしじつは、誰もいないところでマズルカ全曲を奏でているので すよ! ここ数年のあいだ、貴方は音楽教育にも熱意を注いでいます。貴方のレッスンにおい て、ショパンの音楽はどのような地位を占めているのでしょうか? 若いピアニストたちが、超絶技巧に富んだ、身体的な挑戦を要求する作品を演奏でき るようになりたいと望むのは至極当然です。例えば、ラフマニノフの第 3 番のソナタのよう な……。私自身も 15 歳の時にバラキレフの難曲《イスラメイ》を弾いていましたから、学生 たちの意欲は重々理解できます。ところで、詩情や多彩な音色を表現し、さまざまに旋 律を歌い、理にかなったルバートを構築することは、容易であると信じられています。し かし、それらは全く易しくありません!だからこそ私は弟子たちに、ショパンの夜想曲や ブラームスの間奏曲やバッハの前奏曲・フーガを選曲するよう、強く勧めています。カン タービレを習得し、和声語法を探求し、楽曲の深部に秘められた力を感じ取ることができ るようになるからです。そう、“響きを満たさなければ”ならないのです。そして私たち奏者 は、作曲家の息遣いを会得するよう努めなければなりません。なぜなら音楽は、“呼吸す る”生身の人間が書いたものだからです。ショパンの息遣いは、ハイドンの息遣いとは違 います。ドビュッシー、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス、リスト、ラヴェル、バッ ハの息遣いとも異なるのです。 34 ショパン: 24 の前奏曲、幻想即興曲、夜想曲、舟歌

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