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ホアキン・アチューカロ 33 またシエナでは、自分の演奏家人生の中でもっとも決定的な出会いの一つを経験しまし た。舞踊家・振付家のアレクサンダー・サハロフ( 1886-1963 )との出会いです。彼は、“響 きを満たすこと”“動きを満たすこと”“時を満たすこと”について語っていました……。私 には、すぐに彼の言葉の重みを体感することはできませんでした。しかし時とともに、彼 の言葉が意味を成すようになりました。そして私は、演奏家には音楽的な時を、その内な る生の持続と緊張によって満たす義務と必要性があることを、はっきりと意識するようにな ったのです。 貴方は長年にわたる演奏活動を通じて、ショパンの音楽とじつに特異な関係を築いて きました。確かに貴方の演奏会プログラムには、しばしばこの作曲家の名前が現れま す。しかし貴方は、ショパンの限られた作品だけを演奏し続けています。これほど愛着 のある作曲家の作品を、厳選して取り上げているのはなぜなのでしょうか? ショパンの音楽はあまりに美しく、あまりに偉大です。彼の作品を前にすると、自分はちっ ぽけな存在に感じられます。だからこそ私はこれまでずっと、ショパンの限られた作品だ けに集中して向き合い、その豊かさを最大限に掘り下げることを望んできたのです。

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